小沢の大師
参照 伊豆の伝説
 下田市中(中村とも呼ばれた)の小澤に小さい岩屋があってそこにお大師様のお堂がある。
 昔小山の寅吉はこのお大師様の熱心な信者で、日夜信仰怠りなかった。
或る日の夕方、仕事から帰った寅吉の馬が急に腹痛で苦しみだした。
いろいろ手当したがどうしてもよくならない。
足をばたつかせて苦しんでいる。困り果てた寅吉は、日頃信心している「小澤のお大師様」を一心に念じた。
その夜お大師様が夢枕に立たれて寅吉に申されるには「岩屋のそばにある笹の葉をとって釆て馬に食べさせょ。馬の病気は立ちどころに癒る」とお告げになられた。寅吉は「ああ、有難や」と伏し拝んで早速岩屋のそばへとんで行き笹の葉をとって来て馬に食べさせた所、不思議や馬の病気は忽ちなおってしまった。
それで「小澤のお大師様」 の笹の葉は、牛馬の病気をなおしてくれるというので、お百姓さんたちは、大切に保存しているとの事である。
下田市の民話と伝説 第1集より